第11章 官僚制組織職員の行動様式

第11章 官僚制組織職員の行動様式

 

1 権威と権限

 ウェーバーによる支配の理念型=カリスマ的支配、伝統的支配、合法的支配

  権威(指導力)による支配:上司の能力見識(理想的な支配形態)。/キャリアノンキャリア(一般的な学

  歴・専門能力によって権威を調達)、年功序列(勤続経験の長さによって権威を調達)

 地位(威信)による支配:しかし、社会の文化に依存

 権限(法令)による支配法令・規則により授権された指揮監督権に根拠

  バーナードの権威受容説:「機能の権威」=権威による支配。「地位の権威」=「指示・命令が、

  理解可能なもので、従うことに精神的肉体的苦痛を伴わず、従うことが個人的な利害にも組織の

  目的にも反していないように思われるとき」、部下は「無関心圏」に属する指示・命令に従う。

  「権限による支配」:部下たちの受容によって成立。「職場の同僚たちによる仲間内の強要であ

  り制裁」

 

2 組織外への逃亡と組織内での反抗

  組織外への逃亡:辞職の自由

 バーナードの組織均衡論=組織が反対給付する誘因(金銭的価値、社会的地位、生きがいなど)が

  職員の貢献の度合いに見合い、かつ動機(組織加入による欲望・欲求充足の期待)を充たす=

  因・貢献・動機の均衡関係。しかし実際には辞職の自由制約の面あり。そこで↓

  組織内での反抗怠業行動、不服従行動、面従腹背行動

  面従腹背行動=官僚制組織の上下双方向の情報伝達経路の意図的閉塞

   @上命下服」関係の機能不全:ア)裁量の停止(上司の指示・命令をいかなる補正・補完も加

    えず実行)、イ)裁量の濫用(上司の指示・命令に独自の判断・解釈を勝手に加える)

   A下意上達」関係の機能不全:ウ)上申の停止(上司に報告すべき情報の秘匿や、上司の意向

    を聞かない独断的処理)、エ)上申の濫用(すべての情報と案件をそのまま無差別に上申)

 

3 忠誠と反逆(特に「下から上へ」の働きかけに注目)

  忠誠の対象:忠誠対象の転位(課長補佐→局長)や集団・組織への忠誠は直属上司への反逆になり

  得る。組織目的・理念への忠誠による反逆

  公務員の倫理:行政官僚制組織は政治機関を補佐・補助すべき従たる存在。イギリスの「ダーダネ

  ルス報告」(公務員は上級機関に対して諌言した上で、実施においては政府政策の実施に最善の

  努力を払え)。しかし、

    命令服従の世界に生きる公務員にも、決して犯してはならない行為があり、一身を賭して抵抗

   し反抗すべきとき、さもなければ敢然と辞職すべきときがある

 

4 指揮監督の限界とその効果

  ストリート・レベルの行政職員」:指揮監督関係が希薄なケース=上下を結ぶ情報伝達経路のパ

  イプが細い場合。「広い裁量の余地をもって、対象者と直に接触しながら日々の職務を遂行して

  いる行政職員」。マイケル・リプスキーによる命名。外勤警察官やケースワーカーなど=現場担

  当職員の裁量の余地の広さと対象者に対する権力の大きさ。一方で弊害抑制のための上級機関に

  よる通達や研修・教育訓練

  「ストリート・レベルの行政職員」の広い裁量

★第1段階エネルギー振り分けの裁量=ディレンマ」:限られた勤務時間とエネルギーの範囲内

   で多様な業務の遂行を期待→(例)外勤警察官のサービス活動・秩序維持活動・規制執行活動

   (駐在所・派出所に待機)や巡回連絡・犯人逮捕・職務質問(地域内を巡回)

   「限られた勤務時間とエネルギーの範囲内では、このうちのどの業務であれ、これを満足のい

    くまで十分に実行することは不可能

     業務記録による勤務評定には副作用あり。「いかなる種類の処理件数が評価対象に採用され、

    どの件数が相対的に高く評価されるかが、下級機関・部下の行動に決定的な影響を及ぼす」

  第2段階法適用の裁量」:「執行活動を担当しているありとあらゆる第一線職員の業務に、程

   度の差はあれつねに付随」


 

 

 

第12章 第一線職員と対象集団の相互作用

 

1 規制行政活動の構造

  規制行政活動:「公共の利益を実現するために、ある種の行為をすることを国民に命令したり、こ

  れを禁止したり許可したりする活動」

  まず、規制法令の制定交付活動:「当該の規制措置に関する普遍的一般的なルールを法令形式に成

  文化しこれを制定公布し、国民に周知徹底をはかる活動」=規制政策の大半の構成要素:所管官

  規制対象集団規制対象行為適用手続制裁措置(ただし補助機関構成、所掌事務分掌、

  職員数、予算額などは規定されず)

  規制対象行為の規定の曖昧さ(所管官庁に広い裁量の余地):対象集団による対応戦略(制裁措置

  の回避=虚偽の申請・申告・報告・届出、居直り、規制法令上の抜け道の探求など)。「所管官

  庁の側はあらかじめ手の内をさらけ出してしまうことの愚を避け、時に応じて臨機応変に、また

  相手の出方に応じて融通無碍に対応する余地を残しておこうとする」

 

2 規制措置の執行可能性と執行水準

  規制措置の設計:違反行為をある程度以下の水準にまで有効に抑止し取り締まる

  執行可能性に影響する諸要因:@行為の合法・違法の分かれ目判定の程度 A対象集団把握の程度

  B違反者に対する不利益の程度 C取締の「つぼ」の程度 D人々の協力の程度

  取締活動:違反行為に対する摘発と違反者に対する制裁。規制担当部局の職員数が鍵

  取締活動体制の整備水準を決定する規準 :目標指向の規準遵法水準。一定水準以上の遵法状態

  の達成・維持を目標。規制担当部局の観点)と費用指向の規準費用水準。費用が便益(効果の

  貨幣価値)を越えない限度内。費用水準を直接便益に置く取締活動体制と、費用水準を直接便益

  間接便益に置く取締活動体制。査定部局の観点)

  取締活動体制の整備水準は規制担当部局と査定部局の交渉によって決定

 

3 対象集団と第一線職員の相互作用

  違反者の類型:@善意の違反者 A悪意の違反者 B異議申し立て者 C反抗者(「当局」の存在

        と権威そのものに反感)

  第一線職員執行戦略:@周知戦略 A制止戦略(物理的な装置を設置して違反行為の発生を制止

  し、人々の行動をごく自然に遵法行動に向けて誘導していく戦略)  B制裁戦略 C適応戦略

   (行政機関側が規制法令を機械的に執行するのは適当でないと判断したときに採られる戦略)

   「人を見て法を説く」必要性

 取締活動の本来の姿:悪意の違反者に対して制裁戦略をもって臨むこと。しかし、時間とエネルギ

  ーに限界→「一罰百戒」へ。しかし、規制執行活動イコール取締活動ではない(善意の違反者の

  存在あるから)→

 「法令上は過剰とも思われる規制措置を用意しておきながら、実際には過少な制裁しかおこなわれ

  ない」という現象→悪意の違反者による偽証・偽装→「第一線職員は悪意の違反者と善意の違反

  者を的確に見分けようとして、猜疑心に満ちた尋問をおこなうことになりがちである。そして、

  このことが善意の人々の心を深く傷つけ怒らせることになってしまう」

 第一線職員裁量行為:最も重要で困難なのは適応戦略による対処。

 「規制法令にしろ、その解釈・運用のマニュアルとして作成された行政規則にしろ、千差万別の対

  に対応する手引きとして決して万全なものではありえない」→「異議申し立て者に直面するこ

  とは、行政機関がみずからの活動について再考する絶好の機会」、しかし、「あくまで標準的な

  執務マニュアルにすぎないはずの通達等に固執して、機械的に制裁戦略をもって対応してしまう

  ことの方が多い」

 ☆「現代国家の行政活動の合法性・妥当性は、そしてその有効性も、究極のところ第一線職員の賢

   明なる判断に大きく依存しているのである」